「きんたい」と八尾の自然
体長わずか数センチの淡水魚「ニッポンバラタナゴ」と、保全の取り組みをご紹介します。
バラ色になった雄のきんたい
バラ色になる小さな魚
通称「きんたい」
「きんたい」は、学名をニッポンバラタナゴと呼ぶ、体長わずか4〜5cmほどの日本固有の淡水魚です。
春から夏にかけての繁殖期になると、オスのお腹やヒレがバラの花のような美しい鮮やかな色(婚姻色)に変化します。この美しさと親しみやすさから、八尾の地域で古くから「きんたい」と呼ばれ愛されてきました。
貝の中にたまごを産む?ふしぎな生態
二枚貝(ドブガイ・マツカサガイ等)がないと生きていけない不思議な絆
貝を見つける
ため池の底に棲む二枚貝(ドブガイなど)に近づき、安全な産卵場所か確かめます。
貝の中に産卵!
メスは繁殖期になると産卵管が伸びて、貝の中に卵を埋める様になります。
安全に成長・旅立ち
外敵から守られた貝の中で卵が孵化。元気に泳げる赤ちゃん(稚魚)になってから外へ泳ぎ出します。
貝がいなくなると、きんたいもいなくなる: きんたいを守るためには、魚だけではなく、たまごを預かってくれる「二枚貝」や、その貝が暮らせるきれいな泥やため池の環境全体を守る必要があります。
八尾・高安の「ため池文化」と人々の暮らし
八尾市の高安山麓周辺は、雨水の確保が難しかったことから、古くから数多くの「ため池」が造られてきました。
人々は農作物を育てるためにため池の水を使ったり、定期的に池の水を抜いて泥をさらう「かいぼり」を行ったりしてきました。人の手が適度に入ることで池に光が注ぎ、二枚貝や「きんたい」にとっても理想的な生きもの豊かな環境が何百年も維持されてきたのです。
八尾市や里山のため池に暮らす多種多様な生き物たち
八尾市の自然の現状と「基礎情報」の課題
里山の変化と後継問題
現状、八尾の里山にはある程度豊かな自然が残されています。しかし、人口減少や土地の後継問題により管理の手が離れ、里山環境そのものが減少・変化しつつあります。
市街地の生き物と基礎情報の不足
市街地は商業施設などが整い多くの人が快適に暮らせる街となっていますが、身近な水路や田んぼ等にも生き物が生息しています。しかし、過去から現在にかけて生き物の情報が蓄積されておらず、自然環境を残していくための「基礎情報がない」ことが大きな問題となっています。
NPO法人 ニッポンバラタナゴ高安研究会の取り組み
1998年の発足以来、25年以上にわたり里山と生き物を守り続けています
当館を管理運営する「NPO法人 ニッポンバラタナゴ高安研究会」は、絶滅の危機に瀕した野生のニッポンバラタナゴが八尾市高安地域に生息していることが確認されたことをきっかけに、地元農家や地域住民、研究者らが手を取り合ってスタートしました。単に魚を保護するだけでなく、「命を育む里山全体の健全な水循環」を取り戻すための様々な活動を長年続けています。
伝統技法「ドビ流し」の復活
ため池の水を抜いて池底を日光乾燥させる伝統の水質浄化法「ドビ流し(池干し)」を実施。外来種を防除し、産卵床となる二枚貝や「きんたい」が豊かに増える環境を保っています。
水源地・高安山の森林整備
ため池へ注ぐきれいな水を生むため、高安山周辺の放置された雑木林の間伐や下草刈りを毎月実施。山林の保水力を回復させ、健全な水循環系を蘇らせています。
定期調査と環境教育
毎月のため池水質調査・生態計測により「基礎情報」の蓄積を継続。子どもたちの自然観察会や地域と連携したお米(キンタイ米)作りを通じて保全の輪を育んでいます。
なぜ数が減ってしまったのか?
環境の変化と複合的な要因1. 外来亜種タイリクバラタナゴとの交雑
大陸から持ち込まれたタイリクバラタナゴと交雑(混ざり合ってしまうこと)が進み、純粋なニッポンバラタナゴの遺伝子が失われる深刻な危機に瀕しています。
2. ため池の管理低下と河川改修
ため池の管理が行われなくなったり、河川改修による環境変化で水辺がコンクリート化し、産卵床となるドブガイなどの二枚貝が生息できる場所が減ってしまいました。
3. 農薬など化学物質の流入
農薬などの化学物質がため池や水路に流入することで水質が悪化・影響を受け、デリケートな「きんたい」や二枚貝の個体数が減少しました。
4. 密猟者による大規模な捕獲
人の直接的な影響として、密猟者による大規模な捕獲(乱獲)が行われたことで、地域固有の群れが一気に追い詰められてしまいました。
身近な自然を、未来でも身近に。
「きんたい廃校博物館」は、ただ見るだけではなく、八尾の豊かな自然を守る仲間を増やす拠点です。開館日に本物の「きんたい」に会いに行き、身近な命の不思議を一緒に体感してみませんか?